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制度・公的データの知識

3段階料金の損益分岐|何kWhでフラット型が逆転するか

第3段階が割高な仕組みと、エリア別の分岐kWhを早見表で

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※本記事は2026年6月時点の情報です。掲載する単価はすべて燃料費調整前・再生可能エネルギー発電促進賦課金別・税込で、2024年4月1日改定〜2026年時点の規制料金(経過措置料金)ベースです。実額は燃料費調整額・再エネ賦課金・各社の割引で変動します。

「たくさん使う家庭は、使うほど単価が上がる段階型より、一律単価のフラット型に乗り換えたほうが得」――よく聞く話ですが、これは 住んでいるエリアによって正しかったり、間違っていたり します。大手電力の 従量電灯(3段階料金) は使うほど1kWh単価が上がりますが、その「1段階目の安さ」がエリアで約2倍も違うためです。

本記事の主題は、基本料金論や個社の単価表の焼き直しではありません。「段階型」と「フラット型(一律単価)」が何kWhで逆転するのか、その損益分岐kWhをエリア別に定量化 することに絞ります。結論を先に早見表で示し、その後で仕組みと注意点を解説します。

結論早見表:エリア別 損益分岐kWh

先に要点を述べると、具体的な分岐kWhが実在するのは関西・中部の2エリアだけ です。それ以外の東京・東北・四国・中国・沖縄は1段階目から単価が高く、試算条件下では 一律29円のフラット型が広い使用量帯で有利 という結果でした(単一の分岐kWhにはなりません)。

下表は、大手の段階型(従量電灯)の1段階目・3段階目の単価と、新電力に多いフラット型(一律単価の代表例)との損益分岐の目安です。基本料金が同等の前提で、電力量料金部分だけを比較 しています。フラット型に基本料金がある/段階型の基本料金がエリアで違う場合、分岐は高使用量側にずれます。

エリア(段階型)1段階目3段階目3段÷1段一律29円との分岐一律26円との分岐
関西(従量電灯A)20.21円28.59円1.41倍ほぼ全域でフラット安(基本料差次第)約511kWh超でフラット安
中部(従量電灯B)21.20円28.62円1.35倍全域で段階型が安い(逆転せず)約543kWh超でフラット安
東京(従量電灯B)29.80円40.49円1.36倍全域でフラット安全域でフラット安
東北(従量電灯B)29.62円40.32円1.36倍全域でフラット安全域でフラット安
四国(従量電灯A)30.65円40.78円1.33倍全域でフラット安全域でフラット安
中国(従量電灯A)32.75円41.55円1.27倍全域でフラット安全域でフラット安
沖縄(従量電灯)40.20円47.72円1.19倍全域でフラット安全域でフラット安

※単価は円/kWh・燃料費調整前・税込。分岐は基本料金が同等の前提での電力量料金部分の比較。『全域でフラット安/段階型が安い』は基本料金が同等の場合の目安で、基本料金の差で分岐位置はずれます。

ハイライトした関西・中部は 段階型の1段階目が安く、損益分岐が実在するエリア です。逆に東京・東北・四国・中国・沖縄は1段階目から中位〜高単価のため、試算条件下では一律単価のフラット型が広い使用量帯で有利という結果でした。「使うほどフラットが得」という単純な分岐kWhは存在しない ことが、ここから読み取れます。

なぜ「使うほど単価が上がる」のか

① 3段階料金は「少使用世帯を守る」制度

大手電力の従量電灯(従量電灯A/B)は、月の使用量を3段階に区切り、段階ごとに1kWhあたりの単価を変えています。東京電力EPの公式説明によると、第1段階(月120kWhまで)は 『ナショナル・ミニマム(国が保障すべき最低生活水準)』 の考え方で比較的低く設定され、第2段階(120〜300kWh)は標準家庭の平均的水準、第3段階(300kWh超)はやや割高に設定されています。

つまり、第3段階が割高なのは 意図的な制度設計 です。生活に最低限必要な電力を安く保ちつつ、多く使う層には省エネを促す目的があります。「段階型は割高な制度」と一面的に断じるのは正確ではなく、少使用世帯にとっては1段階目の安さが効く、という二面性があります。

② 第3段階は第1段階の約1.2〜1.4倍(エリア差あり)

第3段階の単価は第1段階より高く、その倍率はエリアで異なります。早見表のとおり、東京は1.36倍(29.80円→40.49円)、関西は1.41倍(20.21円→28.59円)、沖縄は1.19倍(40.20円→47.72円) です。沖縄のように1段階目がもともと高いエリアは倍率が小さく、東京・関西のように1段階目が相対的に低いエリアは倍率が大きく出る傾向があります。倍率だけでなく 1段階目の絶対水準 が、フラット型との損益分岐を決める鍵になります。

③ 1段階目の単価はエリアで約2倍違う

損益分岐を左右する1段階目の単価は、関西20.21円〜沖縄40.20円とエリアで約2倍の開き があります。関西・中部は全国でも低水準、中国・四国は30円台、沖縄は40円台です。一律単価のフラット型を当てはめたとき、この1段階目を上回るか下回るかで「少使用でも段階型が残るか・フラットが勝つか」が分かれます。

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損益分岐の考え方:単一の分岐kWhは存在しない

段階型とフラット型(一律単価)の損益分岐は、フラット単価を段階型のどの段に当てるか で決まります。フラット単価が段階型の1段階目より高ければ、少使用域では段階型が有利。フラット単価が3段階目より低ければ、多使用域ではフラットが有利。その境目が損益分岐kWhです。

重要なのは、この分岐は「フラット単価をいくらに置くか」で激変する 点です。下表は使用量帯ごとに、一律29円フラットと段階型のどちらが得かを示した目安です(基本料金同等前提)。

エリア(1段階目の水準)〜120kWh(少使用)120〜300kWh(標準)300kWh超(多使用)
関西・中部(1段目が安い)段階型○ / フラット×ほぼ拮抗(△)やや拮抗(△〜○)
東京・東北(1段目が中位)フラット○ / 段階型△フラット○フラット○
中国・四国・沖縄(1段目が高い)フラット○フラット○フラット○

※一律29円フラット vs 段階型、基本料金同等前提の目安。○=その帯でフラット有利、△=拮抗、段階型○=段階型有利。段階型の累積平均単価(基本料込・300kWh時点)が一律単価を下回る帯では段階型が残ります。

一律29円では中部は全域で段階型が安く(逆転せず)、関西もほぼ全域で段階型が残ります。フラット単価を 一律26円台 まで下げてはじめて、関西は約511kWh超、中部は約543kWh超でフラットが逆転します。一方、1段階目が中位〜高単価の東京・東北・四国・中国・沖縄では、一律29円フラットが少使用から多使用まで広く有利でした。「多使用世帯ではフラット型が有利になりやすい」のは、1段階目が高いエリアでの条件付きの傾向 です。

累積平均単価で比べるのが正確
段階型は使用量とともに「使った分の平均単価(累積平均単価)」が上がります。基本料金・最低料金込み・燃調前で計算すると、300kWh時点の累積平均単価は 関西24.2円/中部23.9円/東京33.8円/東北33.7円/四国35.7円/中国37.7円/沖縄44.3円。これを下回る一律単価のフラット型なら、その使用量帯はフラット有利と判断できます。エリアで水準が約2倍違うため、「全国共通の分岐kWh」は作れません。

検算:段階型の累積平均単価(使用量別)

下表は段階型の累積平均単価(円/kWh、基本料金/最低料金込・燃調前・税込)を使用量別に並べたものです。自分のエリアの行を横に見て、候補のフラット単価がその値を下回るか を確認すると、どの使用量帯でフラット型が有利になるかが見えます。

エリア100kWh150kWh300kWh400kWh500kWh
関西22.422.824.225.325.9
中部21.222.123.925.125.8
東京29.831.133.835.436.5
東北29.631.033.735.336.3
四国33.934.235.737.037.7
中国35.435.937.738.639.2
沖縄42.642.944.345.245.7

※円/kWh・基本料金/最低料金込・燃料費調整前・税込。各社約款単価から自計算(検算済み)。最低料金制エリア(関西・中国・四国・沖縄)は最初の10〜15kWhの定額分を含む。

たとえば関西は500kWhでも累積平均単価が約25.9円のため、一律29円のフラット型では多使用でも段階型のほうが安い計算になります。一方、東京は400kWhで約35.4円まで上がるため、これを下回る一律単価のフラット型なら多使用域で差が開きます。同じ「多使用」でもエリアで結論が逆になる ことが、この表からわかります。

最低料金制とアンペア制で前提が違う

損益分岐を計算するとき、エリアの料金体系の違いを必ず踏まえる必要があります。大手のエリアは大きく2つに分かれます。

① 最低料金制(関西・中国・四国・沖縄)

最初の10〜15kWhまで 定額(最低料金) を支払い、それを超えた分に段階単価が乗る仕組みです。関西は最初の15kWhで522.58円、四国は11kWhで666.89円、中国は15kWhで759.68円、沖縄は10kWhで643.05円。少使用ほど1kWhあたりの実質単価が高く出やすい ため、損益分岐の計算にはこの定額分を必ず含める必要があります。

② アンペア制(東京・中部・東北など)

契約アンペアに応じた基本料金が別途かかり、使用量0kWhから段階単価が始まります。たとえば東京の30A契約は基本料金935.25円、中部30Aは963.42円、東北30Aは1,108.80円(いずれも税込)。フラット型と比べる際は、基本料金/最低料金まで含めた累積平均単価 で比較するのが正確です。基本料金の扱いを揃えないと、損益分岐の位置がずれてしまいます。

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段階型かフラット型か:判断の4ステップ

1

自分のエリアの1段階目の単価を知る

関西20.21円〜沖縄40.20円とエリアで約2倍違う。1段階目が安いエリア(関西・中部)ほど段階型が残りやすく、高いエリア(中国・四国・沖縄)ほどフラット型が有利になりやすい傾向。

2

毎月の平均使用量を検針票で確認する

〜120kWhの少使用か、120〜300kWhの標準か、300kWh超の多使用かで結論が変わる。少使用ほど『1段階目の単価』が、多使用ほど『3段階目と累積平均単価』が効く。

3

候補のフラット型の単価と基本料金を確認する

フラット型は一律単価でわかりやすい反面、基本料金の有無で総額が変わる。早見表の損益分岐は『基本料金同等の前提』。基本料金がある/ないで分岐位置がずれる点に注意。

4

累積平均単価で年間総額を並べて比較する

検算表の自分のエリア行と、候補フラット単価を見比べる。最終的には燃料費調整額・再エネ賦課金・各社割引で実額が変わるため、シミュレーターに使用量を入れて年間総額で比較するのが確実。

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よくある質問

そもそも3段階料金とは何ですか?なぜ使うほど単価が上がるのですか?

大手電力の従量電灯(従量電灯A/B)は、月の使用量を3段階に区切り、使うほど1kWhあたりの単価が上がる仕組みです。東京電力EPの公式説明では、第1段階(月120kWhまで)は『ナショナル・ミニマム(国が保障すべき最低生活水準)』の考え方で比較的低く、第2段階(120〜300kWh)は標準家庭の平均的水準、第3段階(300kWh超)はやや割高に設定されています。つまり第3段階の単価は第1段階より意図的に高く、エリアにより第1段階の約1.2〜1.4倍です(東京29.80→40.49円、関西20.21→28.59円)。生活に最低限必要な電力を安く保ち、多く使う層には省エネを促す目的の制度です。

段階型(従量電灯)とフラット型(一律単価)は、何kWhから逆転しますか?

一律に決まる『分岐kWh』はなく、お住まいのエリアの段階型1段階目の単価と、フラット型(新電力に多い一律単価)の単価の大小で決まります。試算では、段階型1段階目が安い関西(20.21円)・中部(21.20円)では、一律29円のフラットだと段階型のほうがほぼ全域で安く、フラットが逆転するには一律26円台まで下げて約510〜540kWh超の多使用が必要でした。一方、1段階目から高い東京・東北(約29.6〜29.8円)、四国・中国・沖縄(30〜40円台)では、一律29円フラットが少使用から多使用まで広く有利になりました。『使うほどフラットが得』は、1段階目が安いエリアでのみ成り立つ条件付きの傾向です(いずれも基本料金が同等の前提・燃料費調整前)。

少ししか電気を使わないのですが、それでもフラット型に乗り換えたほうが得ですか?

必ずしも得とは限りません。使用量が少ない(目安〜120kWh)世帯は、段階型の安い第1段階の単価で済むため、フラット型より段階型のほうが安いことがあります。特に第1段階が全国でも低水準の関西(20.21円/kWh)や中部(21.20円/kWh)エリアでは、少使用世帯はフラット型のほうが割高になりやすい傾向です。逆に第1段階から30〜40円台と高い中国・四国・沖縄エリアでは、少使用でもそれを下回る一律単価のフラット型が有利になりやすいです。少使用世帯ほど『1段階目の単価』が効くので、自分のエリアの第1段階単価とフラット型単価を見比べることが大切です。

たくさん電気を使う家庭(月400kWh超)はフラット型が確実に得ですか?

『確実に』とは言えませんが、多使用世帯ほどフラット型が有利になりやすい傾向はあります。段階型は使うほど割高な第3段階(東京40.49円・沖縄47.72円など)の比率が上がり、累積平均単価が上昇するためです(東京は400kWhで約35.4円/kWh)。これを下回る一律単価のフラット型なら、多使用域で差が開きます。ただし関西・中部のように段階型の累積平均単価が400kWhでも約25円/kWh前後と低いエリアでは、多使用でもフラット型(一律29円など)が必ず勝つとは限りません。エリアの累積平均単価とフラット単価の比較が判断材料になります。

最低料金制(関西・中国・四国・沖縄)とアンペア制(東京・中部・東北など)では損益分岐の考え方が違いますか?

はい、前提が異なります。最低料金制エリアは『最初の10〜15kWhまで定額(最低料金)』を支払い、それを超えた分に段階単価が乗る仕組みです(関西は最初の15kWhで522.58円、四国は11kWhで666.89円など)。このため少使用ほど1kWhあたりの実質単価が高く出やすく、損益分岐の計算にこの定額分を必ず含める必要があります。一方アンペア制エリア(東京・中部・東北など)は契約アンペアに応じた基本料金が別途かかり、使用量0kWhから段階単価が始まります。どちらもフラット型と比べる際は『基本料金/最低料金まで含めた累積平均単価』で比較するのが正確です。

電力プランを切り替えるとき、段階型かフラット型かはどう選べばいいですか?

3点を確認すると失敗が減ります。(1)自分のエリアの段階型1段階目の単価(関西20.21円〜沖縄40.20円とエリアで約2倍違う)、(2)毎月の平均使用量(検針票で確認)、(3)候補のフラット型(一律単価)プランの単価と基本料金の有無です。目安として、1段階目が安いエリア(関西・中部)で少〜中使用なら段階型が残りやすく、1段階目が高いエリア(中国・四国・沖縄)や多使用世帯はフラット型が有利になりやすい傾向です。ただし燃料費調整額・再エネ賦課金・各社の割引で実額は変わるため、断定はできません。シミュレーターに自宅の使用量を入れ、段階型・フラット型の年間総額を並べて比較するのが確実です。

出典・参考情報

※本記事の損益分岐・累積平均単価は、各社の電気需給約款値(規制料金/経過措置料金)をもとに、基本料金が同等の前提で電力量料金部分を試算した目安です。実際の電気代は契約プランの単価・基本料金の有無・燃料費調整額・再生可能エネルギー発電促進賦課金・各社の割引で変動します。特定の新電力プランを推奨するものではありません。乗り換え前に各社の公式シミュレーターでご自宅の使用量を入力し、年間総額で比較してください。

✓ この記事の検証プロセス

  • 電力会社の公式約款・料金表PDFを一次情報として参照 (二次情報は使用しません)
  • 49社・370プラン をDBに構造化済。単価・燃調・解約金等を計算エンジンで再現
  • 1社1ファイルの「ファクトカード」でデータベース値・公式値・記事値の3点突合を実施
  • 記事公開前に料金・約款条件のハードコード値を機械的に検査(自動lint)して数値乖離を防止
  • 検証手順の詳細は 計算ロジック / 執筆チーム で公開
最終更新: 2026年6月13日

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