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制度・公的データ

インバランス料金とは?

請求書に載らないのに新電力の撤退・値上げの要因の一つになり得る精算を、公的資料で整理

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※本記事は2026年6月時点の情報です。補正値(C値/D値)や累積価格閾値制度は電力・ガス取引監視等委員会の制度設計・監視専門会合資料に基づき、当面の間の時限的措置として見直しの可能性があります。

「市場連動型プランは安いと聞いたのに、なぜ新電力が値上げや撤退に追い込まれるのか」――その背景には、消費者の請求書には決して載らない インバランス料金 という精算の存在があります。

インバランス料金とは、小売電気事業者が需要予測を外した過不足を、一般送配電事業者(送配電会社)との間で市場価格連動により精算する仕組みです。本記事では「誰が誰に払うのか・どう決まるのか・なぜJEPXが安い日でも跳ねるのか」を、電力・ガス取引監視等委員会の公的資料を引用しながら整理します。

結論早見表:JEPX連動プランとインバランス料金は別物

まず最も誤解されやすい点を整理します。あなたが契約する「JEPX連動の電気料金プラン」と、事業者間で精算される「インバランス料金」は、支払う人も支払先も連動の基準も異なる別の仕組みです。

比較軸JEPX連動の電気料金プランインバランス料金
対象者(支払う人)一般消費者(契約者)小売電気事業者
支払先契約している小売電気事業者一般送配電事業者(送配電会社)
請求書への記載あり(電力量料金として明示)なし(消費者請求書に非掲載)
連動の基準JEPXスポット市場価格(エリアプライス)スポット+時間前市場の30分加重平均×α+β+K/L
需給ひっ迫補正基本的になし(プラン上限のみ)あり(広域予備率8%以下/3%以下で上乗せ)
上限プラン規定の上限(あれば)通常80円/kWh、3%以下時200円/kWh(段階的)

※インバランス料金の上限価格(80円/200円)は補正値(C値/D値)とは別概念の二段階上限です。後述します。

インバランス料金とは?「見えない精算」の正体

① 小売事業者と送配電会社の間の精算

電力は「使う量」と「発電・調達する量」を常に一致させなければ系統が不安定になります。小売電気事業者は需要を予測して電力を調達しますが、予測は必ずずれます。この 過不足分を市場価格連動で精算するのがインバランス料金 です。

支払いの流れは事業者間に限られます。実際に電気を使う消費者の請求書には、インバランス料金という項目は記載されません(託送料金とは別の精算です)。だからこそ「見えない精算」と呼ばれ、市場連動型プランを理解するうえで見落とされがちです。

② 請求書に載らない=消費者に無関係、ではない

請求書に1円も載らないのは事実ですが、「だから消費者に無関係」とは言えません。インバランス料金は 事業者のコストとして、プラン価格の設定や撤退・値上げの判断に間接的に影響 するためです。

需給ひっ迫が続いて精算単価が跳ね上がると、新電力の調達コストが想定を超え、試算条件下では料金見直しや事業継続の判断に追い込まれる事業者が出たことが公知の事実として知られています(本記事では特定社の事情には触れません)。請求書に見えない分だけ、なぜ自分のプランが値上げされたのかが分かりにくくなる、という構図です。

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インバランス料金はどう決まる?算定式の読み方

電力・ガス取引監視等委員会の資料によると、インバランス料金の算定式は試算条件下で次のとおりです。難しく見えますが、押さえるべきは「ベースは市場価格だが、需給状況に応じた補正が乗る」という一点です。

インバランス料金の算定式(電力・ガス取引監視等委員会)
・補給(不足)時 =(α×市場価格 + β + K)×(1 + 消費税率)
・余剰時 =(α×市場価格 + β + L)×(1 + 消費税率)

ここでの「市場価格」は、JEPXのスポット市場価格と時間前市場価格を、30分コマ毎に加重平均した値です(スポット市場だけではない点に注意)。

各記号の意味は委員会資料で次のように定義されています。具体的な係数の数値は一次資料で断定確認できないため、ここでは記号レベルで整理します。

  • α:系統全体の需給状況に応じた調整項
  • β:エリアプライスとシステムプライスの差分(精算月の全コマの中央値)を反映する地域差調整項
  • K/L:インセンティブ定数。系統全体が不足の場合はKを加算、余剰の場合はLを減算する

つまりインバランス料金は「JEPX加重平均(時間前市場を含む)をベースに、系統の需給状況・地域差・不足超過のインセンティブを反映して決まる」ということです。

JEPXが安い日でも跳ねる理由:需給ひっ迫補正(C値・D値)

本記事の核心です。インバランスのベースはJEPX加重平均ですが、全国の需給余力を示す 広域予備率(OCCTO公表)が低下すると、補正インバランス料金として上乗せされます。広域予備率が3%未満になると電力需給ひっ迫注意報が発令される水準です。

この補正は段階的で、広域予備率8%以下でD値、3%以下でC値 が適用されます。C値(3%以下)の方がより深刻な局面に対応し、金額も高くなります。2026年度からはこの補正値が引き上げられます。

区分2022〜2025年度(現行)2026年度(改定)
D値(広域予備率8%以下時)45円/kWh50円/kWh
C値(広域予備率3%以下時)200円/kWh300円/kWh
累積価格閾値制度段階的に措置200円/kWh以上が累積30コマ→翌日上限100円/kWh
閾値制度の解除直前7日間で100円以上の累積コマ数がゼロになった時点

※出典:電力・ガス取引監視等委員会 第7回・第8回 制度設計・監視専門会合資料(2025年)。C値は広域予備率3%以下、D値は8%以下に対応する補正値。値は当面の間の時限的措置で、見直しの可能性があります。

ここで起こるのが 「JEPXが安い日でもインバランスだけ跳ねる」逆転 です。JEPXのスポット価格自体は落ち着いていても、系統がひっ迫して広域予備率がC値・D値の発動水準まで下がれば、補正が上乗せされてインバランス精算単価が大きく動きます。市場価格だけを見ていると見落とす動きです。

C値300円/kWhは「31円/kWh」の何倍?(条件併記)
家電カタログの目安単価31円/kWh(家電公取協、2022年7月改定の目安単価)を基準にすると、補正適用時に料金がC値水準(2026年度300円/kWh)まで到達した場合、目安単価の約9.7倍(300÷31≒9.68)にあたります。ただしこれは 広域予備率3%以下という極端な需給ひっ迫時のみ に適用される補正値で、常時この水準になるわけではありません。また、これは事業者間の精算単価であり、消費者の電力量料金単価そのものではない点にもご注意ください。

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混同しやすい「上限価格」と「補正値」の整理

インバランス料金の話には、似た数字が複数登場します。「上限価格(80円/200円)」と「補正値(C値/D値)」は別の概念 なので、ここで切り分けます。

① 二段階の上限価格(2021年7月導入)

補正前インバランス料金には上限価格が設けられています。K・L値反映後の通常上限は 80円/kWh。ただし複数の一般送配電事業者の供給区域で予想翌日予備率(使用率ピーク時)が3%以下となった日は、上限が 200円/kWh に引き上げられます。これが需給ひっ迫補正の二段階上限の起点です。

② 累積価格閾値制度(2026年度〜)

高値が続く局面に歯止めをかける仕組みも導入されます。スポット市場価格(エリアプライス)が 200円/kWh以上のコマが累積30コマに到達 すると、閾値到達の翌日から補正インバランス料金の上限価格が100円/kWhに引き下げられます。解除は、対象日の直前7日間で100円以上の累積発生コマ数がゼロになった時点です。

用語整理:「上限価格」と「補正値」は役割が違う
・上限価格(80円/200円、累積閾値時100円)=インバランス料金が際限なく上がらないようにする「天井」
・補正値(C値300円・D値50円など)=広域予備率の悪化に応じて上乗せされる「補正の幅」
数字の桁が近いため混同しやすいですが、天井(上限)と補正(上乗せ)はそれぞれ別のルールで動きます。

なぜインバランス料金が撤退・値上げの要因になるのか

新電力は需要を予測して電力を調達しますが、予測がずれた分はインバランス料金で精算します。平常時なら誤差の範囲ですが、系統ひっ迫時にC値・D値の補正が乗ると 精算単価が大きく跳ね上がり、調達コストが想定を超えます

この精算負担は請求書に見えない事業者コストとして積み上がります。試算条件下では、需給ひっ迫が続くとこの負担が経営を圧迫し、料金の見直しや事業継続の判断に追い込まれる事業者が出たことが、公知の一般的事実として知られています(特定社名や撤退事例とは紐付けません)。

消費者の立場では、「市場連動型プランは安い日も高い日もある」という変動だけでなく、その背後で事業者がインバランス精算リスクを負っている ことを知っておくと、プラン選びの判断材料が増えます。

インバランス料金を理解するための4つのポイント

1

支払うのは事業者、消費者の請求書には載らない

インバランス料金は小売電気事業者が一般送配電事業者に支払う精算。消費者の請求書には項目として記載されないが、事業者コストとしてプラン価格や撤退・値上げ判断に間接影響する。

2

ベースはJEPX加重平均(スポット+時間前市場)

市場価格はスポット市場価格と時間前市場価格の30分コマ毎の加重平均値。スポットだけではない点に注意。これにα・β・K/Lの調整項が反映される。

3

広域予備率の悪化で補正(C値/D値)が上乗せ

広域予備率8%以下でD値、3%以下でC値が加算される。2026年度はC値300円/kWh・D値50円/kWh(現行は200円/45円)。JEPXが安い日でも系統ひっ迫で跳ねる逆転が起こり得る。

4

上限価格と累積価格閾値制度で歯止め

通常上限80円/kWh、予備率3%以下時200円/kWh。2026年度からは200円/kWh以上が累積30コマで翌日上限100円/kWhに引き下げる累積価格閾値制度も導入。いずれも見直しの可能性あり。

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よくある質問

インバランス料金は私の電気料金請求書に載りますか?

いいえ、消費者の請求書には項目として記載されません。インバランス料金は小売電気事業者が一般送配電事業者に支払う事業者間の精算で、需給管理の過不足を市場価格連動で精算する仕組みです。ただし請求書に載らないだけで、事業者のコストとして間接的にプラン価格や撤退・値上げ判断に影響します。

インバランス料金はどうやって決まりますか?

算定式は試算条件下で、補給(不足)時=(α×市場価格+β+K)×(1+消費税率)、余剰時=(α×市場価格+β+L)×(1+消費税率)です。市場価格はJEPXスポット市場価格と時間前市場価格の30分コマ毎の加重平均値。αは系統全体の需給状況に応じた調整項、βはエリアプライスとシステムプライスの差を反映する地域差調整項、K・Lは系統が不足なら加算・余剰なら減算するインセンティブ定数です(出典:電力・ガス取引監視等委員会)。

JEPXが安い日でもインバランス料金が高くなることはありますか?

あり得ます。インバランスのベースはJEPX加重平均ですが、広域予備率(全国の需給余力)が低下すると需給ひっ迫補正が上乗せされます。広域予備率が8%以下でD値、3%以下でC値が加算されるため、JEPX価格自体が安い日でも系統がひっ迫すればインバランスだけ跳ねる、という逆転が起こり得ます。

2026年度のインバランス料金の補正値はいくらですか?

2026年度から、補正インバランス料金のC値(広域予備率3%以下時)が300円/kWh、D値(8%以下時)が50円/kWhに見直されます(現行2022〜2025年度はC値200円/kWh、D値45円/kWh)。これは当面の間の時限的措置で、状況を監視し必要に応じて再見直しされる方針です(出典:電力・ガス取引監視等委員会 第8回制度設計・監視専門会合資料)。

インバランス料金が高騰し続けたらどうなりますか?(累積価格閾値制度)

2026年度から累積価格閾値制度が導入されます。スポット市場価格(エリアプライス)が200円/kWh以上のコマが累積30コマに到達すると、翌日から補正インバランス料金の上限が100円/kWhに引き下げられます。解除は、対象日の直前7日間で100円以上の累積発生コマ数がゼロになった時点です(出典:電力・ガス取引監視等委員会 第8回資料4-1)。

なぜインバランス料金が新電力の撤退や値上げの要因になるのですか?

新電力(小売電気事業者)は需要を予測して電力を調達しますが、予測がずれた分はインバランス料金で精算します。系統ひっ迫時にC値・D値の補正が乗ると精算単価が大きく跳ね上がり、調達コストが想定を超えます。試算条件下では、需給ひっ迫が続くとこの精算負担が経営を圧迫し、料金見直しや事業継続の判断に追い込まれる事業者が出たことが公知の事実として知られています(特定社の事情には触れません)。

出典・参考情報

※本記事はインバランス料金制度の仕組みを中立的に解説するものです。補正値(C値/D値)・上限価格・累積価格閾値制度は当面の間の時限的措置であり、電力・ガス取引監視等委員会が状況を監視し必要に応じて再見直しする方針のため、最新の数値は一次資料をご確認ください。特定の電力会社の財務状況・撤退予測についての評価は行っていません。

✓ この記事の検証プロセス

  • 電力会社の公式約款・料金表PDFを一次情報として参照 (二次情報は使用しません)
  • 49社・370プラン をDBに構造化済。単価・燃調・解約金等を計算エンジンで再現
  • 1社1ファイルの「ファクトカード」でデータベース値・公式値・記事値の3点突合を実施
  • 記事公開前に料金・約款条件のハードコード値を機械的に検査(自動lint)して数値乖離を防止
  • 検証手順の詳細は 計算ロジック / 執筆チーム で公開
最終更新: 2026年6月13日

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